インプラントに対する疑問にお答えします
歯の治療にはただ単にドリルで削るだけではなく、特別な器具を用いて長時間かけてじっくりと治療していくというケースもよくあります。
こうした多くの技術は、歯周病で歯を失ったばかりか、骨がほとんど吸収されてしまい、入れ歯もインプラントも適用できなくなったという患者さんのために開発されています。
また、上顎の前歯の場合は、機能的であると同時に見た目がよくないとその治療を完全に果たしたとはいえません。
骨がある程度の高さがあれば問題ありませんが、骨が吸収されると歯肉が下がってくるので、見た目が悪くなります。
骨を作ることも大切ですが、歯肉を失っていることもあり、この場合は樹脂やポーセレン(磁器)で作った歯肉と歯の両方がついた上部構造をインプラント体に装填することで対応します。
審美的に一番困るのは、左右片側のどちらかが自分の歯でもう一方の片側がインプラントの場合です。
不自然ではない状態に合わせるのが難しいのです。
特に片側だけ歯がなくなると骨の吸収が急激に進んでしまい、鼻のところまで骨がなくなるということもあります。
骨があるところに理想的にインプラント体を埋めてこそ美しさが際立つので、インプラント治療は見た目のよさを支える補綴(歯の装填)の技術とラボ(技工室)の技術、骨を作る再生技術などの総合力が求められるわけです。
下顎の骨の高さが足りない歯を抜くと骨の吸収が始まります。
下顎の場合は、最初に骨の高さがなくなってきます。
(症例六)四〇代の男性です。
下顎に五本の歯を入れたいと思っています。
多少骨の吸収が始まっているというのですが、インプラントは入れられるでしょうか?下顎の骨が吸収され高さが減っている場合でも、フィクスチャーを埋入することが可能です。
基本的には、骨にある程度の高さと厚みがないと、インプラント体を骨にしっかり固定することができません。
しかし、下顎は上顎に比べて比較的固くて大きい骨なので、骨が吸収され骨の高さが足りなくても、長さ七ミリのインプラント体を埋入することで、しっかりと固定することが可能です。
高さが足りない下顎の骨にインプラント体を埋入する場合に、障害となるのが下顎臼歯部の骨が著しくなくなっているケースです。
ここには蛙孔と下顎管があり、ここに神経が通っています。
この神経は下唇の知覚を司っており、無理に深く埋入するとインプラント体が神経の束を傷つけることがあります。
たとえば下顎白歯部(奥歯)で下歯槽神経(下顎管)までの骨の高さが六ミリもない場合は、インプラントを埋人前に、神経を一時的に引っ張り出して移動させる必要があり、この治療を「下歯槽神経移動術」といいます。
下顎には神経と血管の束が通っている幌孔という出入り口があります。
頼孔を通る頓神経周囲とその後方の下顎管を通過する下歯槽神経の通る外側の骨を切り取り、神経や血管を外に出します。
骨の外側に出したところでインプラント体を埋め込みます。
埋人が完了したところで、元の場所に神経などを戻すことで完成です。
まれに麻痺が出るケースがありますが、時間が経てばある程度薄れてきます。
この知覚麻痺は一〇人に一人の割合で起こります。
難しい技術ですが、これを事前に行っておけば、骨を再生することなくインプラント体を粗大することが可能です。
ただし最近はこれを行わなくてもボーングラフトやGBRでインプラント塩入が可能になっています。
インプラント体の適正な本数歯をすべて失ってしまった場合は、総義歯かインプラントの選択を迫られます。
現在は、総義歯をインプラントで固定して、より機能性を高めた治療も実施されて成果をあげています。
問題は、インプラントの塩入本数です。
フィクスチャーの本数が少ない方が費用も少なく、安全に治療が受けられるのですが、そうした理解がまだ行き渡っているとは言い難い状況になっています。
下の歯一本を残してすべて抜けてしまったので、インプラントを入れたいと思っています。
下の歯すべてとなると一〇本以上のインプラントを入れなければならないのでしょうか。
手術も大変そうなので心配です。
このような心配をする患者さんが大勢いらっしゃいます。
すべて歯を失ってしまった方が、総義歯をインプラントに固定する場合、上顎ならフィクスチャー三~六本で、下顎の場合三本のフィクスチャーで対応が可能です。
こんなに少なくて大丈夫かと不安に感じる方もいらっしゃいますが、実はこれにはしっかりとした理論があります。
まずは歯にかかる瞭合圧について、考えてみます。
下顎にインプラントを中央に一本、両側の奥歯に一本ずつの合計三本埋入した場合、奥歯のすぐ上に噛むための筋肉がついているため、噛む力は奥歯にいちばん大きくかかります。
ハサミの支点に力がかかるのと同じ原理です。
その証拠に天然歯を見ると前歯の根は一本ですが、奥歯の根は大きく、しかも二本から三本に分かれてしっかりと骨についています。
このことからも、いかに奥歯に大きな力がかかるかがわかります。
つまり、前の一本にはあまり大きな力がかからず、奥歯に近い両側の二本のフィクスチャーに圧力がかかっていることがわかります。
四本ではどうでしょうか。
両側の奥歯に一本ずつと前側に二本の合計四本ですが、この場合もカがかかるのが両側の奥歯です。
片側でものを噛むと奥の歯には沈む力がかかりますが、前の歯には反対の引き抜く力がかかります。
力の方向が逆になるだけで、やはり強い力は奥歯にかかります。
これが五本になったとしても、変わりません。
つまり、前方に多くのインプラントを埋入する必要、はないということになります。
たとえば中央に一本のフィクスチャーを埋大して、上から噛む力をかけると回転する力が働きます。
ところが、両側の奥歯付近にそれぞれ一本ずつフィクスチャーを埋入し、この三本を金属のバーで繋いだ場合、そこに上から圧力をかけると、荷重が分散し、下に沈むベクトルしか働かなくなります。
回転力が抑制されて応力が分散するため、沈む荷重だけがかかるようになるのです。
この場合、前歯付近(中央)のフィクスチャーはまっすぐに埋入しますが、奥歯に近い部分に埋入するものは斜めにすることで上からの力を一層分散することが可能となります。
これはブリッジ治療の理論と同じです。
歯が一本抜けると、後ろの歯が前に倒れてくるために、前後の歯にブリッジをかけ三上は下顎に3本のインプラント体を埋入したイラスト。
下は5本を埋入したもの。
矢印はインプラントに対する応力の向きと強さを示す。
奥歯で噛みしめたときにインプラント体に一番強い応力がかかるのは両側の最後部である。
3本でも5本でも加わる応力には差がない。
本を連結します。
岐合圧を加えたとき、一本の歯だけでは倒れますがブリッジをかけると全体で支えるようになるので、倒れることはありません。
三本の歯の頭を連結して固定してあるために、瞭合圧の回転力は沈む力だけになります。
垣根と同じようなもので、一本の垣根は倒れやすいのですが、横棒が渡してあるとなかなか倒れません。
これがブリッジの力学です。
インプラントもこれを応用し、三本のフィクスチャーを埋入し、合金のバーで繋ぐことで三本が平行に沈むような力がかかります。
骨の軟らかい上顎骨でも基本は三本ですが、骨質や骨董や岐合力を考慮して合計六本以内でフィクスチャーの数を増やすことはあります。
この場合も一本の歯に対して一本のフィクスチャーを埋入する必要はありません。
できるだけ少ないフィクスチャーで、多くの歯を支えたほうが歯肉や骨にとってもいいことは言うまでもありません。
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